柵(しがらみ)なき重力論

自由に重力論を展開します。

動いている物体を異なる慣性系から見る:X軸編(3)

動いている物体を異なる慣性系から見たとき、一方の系から見た物体の位置と速度が、もう一方の系から見るとどう変換されるかの3回目です。

等加速度で動いている物体を系A’から見た場合、その位置 x’(t’) と時刻 t’ との関係は双曲線関数になりますが、その物体を系Aから見ても、やはり、その位置 x(t) と時刻 t との関係は双曲線関数になるということがわかりました。(昨日の記事を参照)

今回は、その計算結果が正しかったかを検証してみます。

等加速度 a で動いている物体を系A’から見た場合の速度は、

 \displaystyle u’(t’) = \frac{a×t’ + C}{\sqrt{1 + (a×t’ + C)^2}}

でした。(「深宇宙探査機を見送る(2)」を参照してください)

系A’の時刻 t’=0 で物体の速度が u’(0)=0 とすると、定数 C はゼロになります。

 \displaystyle u’(t’) = \frac{a×t’ }{\sqrt{1 + (a×t’)^2}}

これを積分すると、物体を系A’から見た位置となり、それは、

 \displaystyle x’(t) = \frac{1}{a}×\left(\sqrt{1 + (a×t’)^2} + D\right)

でした。(「深宇宙探査機を見送る(4)」を参照してください)

系A’の時刻 t’=0 で物体の位置が x’(0)=0 とすると、定数 D-1 になります。

その物体を、系A’に対して速度 v で動いている系Aから見た場合どうなるかが、前回の記事で計算した内容です。

まず、等加速度 a は物体自体の加速度ですので、どの系から見るかには依存しません。

したがって、物体を系Aから見た場合の速度も、

 \displaystyle u(t) = \frac{a×t + C}{\sqrt{1 + (a×t + C)^2}} (式1)

となります。

これを積分すると、物体を系Aから見た位置は、

 \displaystyle x(t) = \frac{1}{a}×\left(\sqrt{1 + (a×t+C)^2} + D\right) (式2)

となります。

次に、ローレンツ変換の式
 x’(t’) = \gamma×(x(t) - v×t)
 t’ = \gamma×(t - v×x(t))

ですが、これらを適用する前提は「ふたつの系で原点が同一」であることです。

それぞれの系での原点 O’(0,0)O(0,0) は、時空間内の同じ点です。

「系A’の時刻 t’=0 で物体の位置が x’(0)=0」であることと、「系A’と系Aの原点は同じ」であることから、「系Aの時刻 t=0 で物体の位置が x(0)=0」であることがわかります。

これから、式2の定数 D は次のとおりです。

 \displaystyle x(0) = \frac{1}{a}×\left(\sqrt{1 + (a×0+C)^2} + D\right)=0

 \displaystyle \frac{1}{a}×\left(\sqrt{1 + C^2} + D\right)=0

 \displaystyle D= -\sqrt{1 + C^2}

また、「系A’の時刻 t’=0 での物体の速度が u’(0)=0 である」ということと、「系A’に対して系Aが速度 v で動いている」ということから、Aの時刻 t=0 での物体の速度 u(0) は、速度の合成の式を適用して、

 \displaystyle u(0)=\frac{v+u’(0)}{1+v×u’(0)}

 \displaystyle =\frac{v+0}{1+v×0}=v

です。

これにより、式1の定数 C は次のとおりです。

 \displaystyle u(0) = \frac{a×0 + C}{\sqrt{1 + (a×0 + C)^2}}

 \displaystyle = \frac{C}{\sqrt{1 + C^2}}=v

これを C について解くと、

 \displaystyle \frac{C}{\sqrt{1 + C^2}}=v

 \displaystyle \frac{C^2}{1 + C^2}=v^2

 \displaystyle C^2=v^2×(1 + C^2)
 C^2=v^2+v^2×C^2
 \displaystyle C^2-v^2×C^2=v^2
 C^2×(1-v^2)=v^2

 \displaystyle C^2=\frac{v^2}{1-v^2}

 \displaystyle C=\frac{v}{\sqrt{1-v^2}}

となります。

定数 D を再計算すると、
 \displaystyle D=-\sqrt{1+C^2}

 \displaystyle =-\sqrt{1+\frac{v^2}{1-v^2}}

 \displaystyle =-\sqrt{\frac{1-v^2+v^2}{1-v^2}}

 \displaystyle =-\frac{1}{\sqrt{1-v^2}}
です。

ここで、\displaystyle \frac{1}{\sqrt{1-v^2}}\gamma と書きます。

 \displaystyle C=\frac{v}{\sqrt{1-v^2}}=\gamma×v

 \displaystyle D=-\frac{1}{\sqrt{1-v^2}}=-\gamma

です。

以上を合わせると、物体を系Aから見た位置は、

 \displaystyle x(t) = \frac{1}{a}×\left(\sqrt{1 + (a×t+\gamma×v)^2} -\gamma\right)

となり、昨日の計算結果と一致しました。(よかった)

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