柵(しがらみ)なき重力論

自由に重力論を展開します。

向かってくる・遠ざかっていく物体での光速度(1)

以前の記事で、向かってくる・遠ざかっていく物体では、見かけの速度によっての時間の伸び縮みがあることを書きました。
これは、ドップラー効果によるものです。

「どうせ見かけの速度でしょ」と思われるかもしれませんが、一般性相対性理論では重力ポテンシャルの時間の伸び縮みの本質です。

特殊相対性理論では、ローレンツ変換で時間や長さの伸び縮みがあっても、光速度は不変でした。
しかし、ドップラー効果による時間の伸び縮みでは、光の速度も変わってしまうようなのです。

重力ポテンシャルがないところでも、つまり物体が加速度運動してなくてもドップラー効果はありますよね。
ということは、重力ポテンシャルがなくても光の速度は変わってしまうのでしょうか。(ビックリ!)

まず、ローレンツ変換での時間や長さの伸び縮みについて、復習しておきましょう。

いま、地球から距離 l だけ離れた天体から、ロケットが速度 v で地球に向かってくるとします。
このロケットは幅が h の平らなロケットです。

ロケットが天体を出発するときにロケットの左端から光が出て、ロケットが地球に着するときにその光がロケットの右端に着くとします。(かなり幅広のロケット、または地球と天体との距離が微小です)

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地球とロケットのそれぞれから見た時間・長さの伸び縮みは、辻妻が合うはずです。
計算式にしてみましょう。

 

まず、地球から見た計算式です。

ロケットが天体を出発してから地球に到着するまでの時間を dt とします。

 \displaystyle dt = \frac{l}{v}

ロケットの左端から光が出て右端に着く光は、地球から見ると斜めに進んでいます。
その進んだ距離を r とすると、
 r^2 = l^2 + h^2
ロケットの幅 h に関する式に直して、
 h^2 = r^2 - l^2
です。

ロケットが地球に着いたとき(ロケットが天体を出発してから時間 dt が経ったとき)、その光も r だけ進んでいますので、

 \displaystyle r = dt =\frac{l}{v}
です。(光速度を1とする単位系です)

h に関する式に戻すと、
 h^2 = r^2 - l^2

 \displaystyle = \left(\frac{l}{v}\right)^2 - l^2

 \displaystyle = l^2×\left(\frac{1}{v^2} - 1\right)

 \displaystyle = l^2×\frac{1-v^2}{v^2}

 \displaystyle = \frac{l^2}{v^2}×(1-v^2)

両辺の平方根を取り、

 \displaystyle h = \frac{l}{v}×\sqrt{1-v^2}  (式1)

です。

 

次に、ロケットから見た計算式です。

ロケットから見ると、天体がロケットから離れ、地球がロケットに近づいてきます。
ロケットから見た天体と地球との距離 l’ は、ローレンツ変換で短縮して、
 l’ = l×\sqrt{1 - v^2}
です。

天体がロケットから離れ 地球がロケットに着くまでの時間 dt’ は、

 \displaystyle dt’ = \frac{l’}{v}

 \displaystyle = \frac{l×\sqrt{1 - v^2}}{v}

 \displaystyle = \frac{l}{v}×\sqrt{1 - v^2}

です。

この時間で、ロケットの左端からでた光が右端に着きます。つまり、その光は距離 h を進み、それにかかる時間は h です。(光速度は1です)

  \displaystyle dt’ = h = \frac{l}{v}×\sqrt{1 - v^2} (式2)

 

式1と式2は合いましたね。

ロケットが地球から出発して天体に向かう場合も同様です。(つづく)

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