柵(しがらみ)なき重力論

自由に重力論を展開します。

系の視点、観測者の視点(2)

前回の記事で、同じ慣性系の中で、異なる位置にいる観測者が物事をどう見るかについて書きました。
今回は、加速度系の中で異なる位置にいる観測者の視点について考えます。

 

(1)観測者が互いを見る

加速度系にいる観測者は、一瞬一瞬は慣性系にいて、次々に慣性系を乗り継いでいます。

同じ加速度系の中で、異なる位置にいる観測者A、Bが、互いを見ると、自分の姿が相手に届くまで時間がかかりますから、お互いに過去の相手を見ています。

過去の相手は、いま自分がいる慣性系とは別の慣性系にいます。
観測者は互いに別の慣性系にいるということです。

加速度が一定であるとすると、加速度は不変で、観測者に共通しています。
また「いま」の速度も共通しています。
速度は相対的ですから、観測者は、いつも、「いまの自分の速度はゼロである」と考えることができます。

さて、自分の姿を映した光は、その一瞬に自分がいた慣性系を出発し、その慣性系に対して加速度運動をしている相手に届きます。

深宇宙探査機に追いつけない光」の記事で書きましたように、一定距離・一定時間だけ離れた光源から出た光は、加速度運動をしている物体に届かない(追いつけない)のです。

つまり、観測者A、Bが一定距離・一定時間離れていると互いに相手の姿を見ることができない、ということです。

あれっ、光の速度は誰に対しても一定だから、光が追いつけないというのはヘンじゃない?
光の速度が一定というのは、観測者に光源が見えている場合ですね。
光が届かないということは、光源が見えていないということで、観測者にとってその光は「ない」のです。
ないものの速度についての言及はそもそも意味がないのですね。


(2)物体の位置を見る

観測者A、Bが静止系に固定されている物体を見ます。
物体は自由落下しています。

物体からそれぞれの観測者への距離が異なると、それぞれの観測者は、異なった過去にある物体を見ます。
観測者によって物体の位置は異なって見えます。

 

(3)物体の速度を見る

慣性系にいる観測者の場合は、観測者にとって、向かってくる物体は速く見え、離れていく物体は遅く見えていました。

加速度系でも同様ですが、それに加え、物体からの距離によって、それぞれの観測者は異なった過去にある物体を見ていること、また観測者が物体を見たときの時刻も異なりますので、物体の速度は異なって見えます。

 

(4)物体における時間の伸びを見る

上で書きましたように、観測者によって物体の速度が違って見えますので、物体における時間の流れも違って見えます。

時間の伸び縮みには、物体速度による伸び(ローレンツ変換による伸び)と、ドップラー効果による伸び縮みの、ふたつの要因があります。

慣性系の観測者にとっては、物体の速度は物体の位置には依りません(どれだけ過去の物体を見ても速度は同じ)でした。
速度系の観測者にとっては、 物体の位置にはよって物体の速度は異なって見え、それによって物体の時間の伸びも異なって見えます。

つまり、物体の位置にはよって時間が伸び縮みするということです。
これが、加速度(重力)のポテンシャルによる時間の伸び縮みです。

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