系の視点、観測者の視点(1)
以前の記事「三つの視点・観測者」にも書きましたが、観測者(の視点)によって、物事は違って見えます。
同じ慣性系の中で、異なる位置にいる観測者は、物事をどう見るのでしょうか。
(1)観測者が互いを見る
同じ慣性系の中で、異なる位置にいる(固定されている)観測者A、Bが、互いを見ています。
A,Bの空間的距離が であるとすると、光速度を1とする単位系を使えば、その時間的距離も です。
つまり、互いに、 だけ過去の相手を見ているということです。
ただし、動かない(固定されている)ので、 だけ過去の相手も「いま」と同じ位置にいます。
また、同じ慣性系の中で動いていない(固定されている)ということは、ふたりの観測者は、そして過去の観測者も、座標目盛りを共有しているということです。
Aが「わたしは位置 にいる」と言うとき、( だけ過去の)Bも「あなたは位置にいる」と同意します。
(2)物体の位置を見る
観測者A、Bが、慣性系のある位置に固定されている物体を見ます。
物体からそれぞれの観測者への距離が 、 とすると、それぞれは 、 だけ過去の物体を見ます。
ただし、物体は動かない(固定されている)ので、過去の物体も「いま」と同じ位置にいます。
Aが「物体は位置 にいる」と言うとき、( だけ過去の)Bも「物体は位置 にいる」と同意します。
(3)物体の速度を見る
慣性において、等速に動く物体の速度が であるということは、たとえば、物体が時刻 に位置 にあって、また時刻 に位置 にあったとして、 ということです。
観測者A、Bは座標目盛りを共有しているので、「この系に対して物体の速度は である」ということについて、ふたりは同意します。
ところが、観測者にとって、向かってくる物体は速く見え、離れていく物体は遅く見えます。
物体が観測者Aに正面から近づいているとすると、Aにとっての物体の速度は に(元の速度の 倍に)見えます。
逆に、速度 で離れていくとすると、速度は に(元の速度の 倍に)見えます。
物体の速度は、観測者によって異なって見えるのです。
(4)物体における時間の伸びを見る
慣性系に対して速度 で動く物体の時間は、慣性系での時間の流れに比べると 倍に伸びて(ゆっくり進むように)見えます。
ところが、各観測者にとってはそれぞれ速度が違って見えますので、時間の伸びも違って見えます。これはドップラー効果です。
物体が観測者Aに正面から近づいているとすると、
Aにとって物体の時間は 倍に伸びて見え、
物体が離れていく観測者Bにとっては 倍に伸びて見えます。
物体の時間の伸びは、観測者によって異なって見えるのです。