柵(しがらみ)なき重力論

自由に重力論を展開します。

誰にでもドップラー効果はある

ドップラー効果とは、パトカー、救急車、消防車のサイレンが高くなったり、低くなったり、動いている物体から放たれた光が、青くなったり(青方偏移)、赤くなったり(赤方偏移)する、あれです。

 

ちょっと計算してみましょう。
次の想定をします。

観測者の系(座標)に固定された2点aからbへ、ある物体が動きます。
観測者の系で点a、bは、微小距離lだけ離れているとします。(なぜ「微小距離」にするかというと、物体が長距離動くと観測者から見た角度が変わってしまうから)

観測者から見て、物体が点aから点bへ速度vで動きます。
物体が点aからbへ動くのにかかる時間は l / v です。

物体の側から見ると、点a、b間の距離は縮み l×\sqrt{1 - v^2} に見えています。
物体のところにあった点aは物体から速度 v で離れていき、点bが物体に速度 v で近づいてきます。
点aが物体のところにあったときから、点bが物体のところに来るまでにかかる時間は、
 (l×\sqrt{1 - v^2}) / v = (l / v)×\sqrt{1 - v^2}
です。

この間、物体がある周波数\nuで光パルスを放ち、観測者がそのパルスを受け取るとします。
この間に物体が放つパルスの総数は、周波数×時間で、
 \nu×(l / v)×\sqrt{1 - v^2} (式1)
です。
このパルスの周波数でドップラー効果を考えます。(単に光の周波数でもよいのですが、数えやすいようにパルスにしました)

 

まず、観測者に対して物体が平行に動く場合のドップラー効果です。

物体が観測者に対して平行に動いているので、点a、bは、観測者からの距離が同じです。

点a、bは、観測者から同じ距離にあるので、物体が点aにあったときに放ったパルスも、点bにあったときに放ったパルスも、パルスが放たれてから同じ時間経過したときに届きます。

物体が点aにあったときに放ったパルスを受け取ってから、点bにあったときに放ったパルスを受け取るまでの時間は、物体が点aからbへ動く時間 l / v と同じです。

受け取るパルスの周波数を\nu’とすると、受け取るパルスの総数は、
 \nu’×l/ v (式2)
です。

物体が放ったパルスの総数と観測者が受け取ったパルスの総数とは等しいはずなので、式1と式2から、
 \nu’×l / v = \nu×(l / v)×\sqrt{1 - v^2}
 \nu’= \nu×\sqrt{1 - v^2}
です。

つまり、観測者から見ると、周波数が\sqrt{1 - v^2}倍に見えるということです。(v = 1光速度です)

 

次に、物体が観測者に正面向かって動く場合のドップラー効果です。

物体が観測者に向かって動いているので、点bのほうが点aよりlだけ観測者の近くにあります。
物体が点bにあったときに放ったパルスが観測者に届く時間は、物体が点aにあったときに放ったパルスが観測者に届く時間よりlだけ短くなります。
これは、点aで放たれた光パルスが点bに進むのに l / 1 = l だけかかるからです。

それだけ短くなった時間で、物体が放ったパルスを受け取ります。その周波数を\nu’とすると、受け取るパルスの総数は、
 \nu’×(l/ v - l) = \nu’×(l / v)×(1 - v) (式3)
です。

物体が放ったパルスの総数と観測者が受け取ったパルスの総数とは等しいはずなので、式1と、式3から、
 \nu’×(l / v)×(1 - v) = \nu×(l / v)×\sqrt{1 - v^2}
 \nu’×(1 - v) = \nu×\sqrt{1 - v^2}

 \displaystyle \nu’ =\nu×\frac{\sqrt{1 - v^2}}{1 - v}
です。

 

では、観測者に対して物体がある角度 \theta 動く場合のドップラー効果です。

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点bのほうが点aよりl×\cos \thetaだけ観測者の近くにあります。

物体が点bにあったときに放ったパルスが観測者に届く時間は、物体が点aにあったときに放ったパルスが観測者に届く時間よりl×\cos \thetaだけ短くなります。

それだけ短くなった時間で物体が放ったパルスを受け取るので、その周波数を\nu’とすると、受け取るパルスの総数は、
 \nu’×(l/ v - l×\cos \theta) = \nu’×(l / v)×(1 - v×\cos \theta) (式4)
です。

式1と、式4から、
 \nu’×(l / v)×(1 - v×\cos \theta) = \nu×(l / v)×\sqrt{1 - v^2}
 \nu’×(1 - v×\cos \theta) = \nu×\sqrt{1 - v^2}

 \displaystyle \nu’ = \nu×\frac{\sqrt{1 - v^2}}{1 - v×\cos \theta}
です。

 

ここまでが、光のドップラー効果ですが、物体から放たれるのが光ではなく、ほかのもののパルスだったらどうなるでしょうか。

例えば、一定周期で水素原子を放つとか、銭形平次投げ銭とか。

そのパルスの速度(観測者から見た速度)をuとすると、物体が点aにあったときに放ったパルスが観測者に届いてから、点bにあったときに放ったパルスが届く時間間隔は、
 (l / v)×(1 - (v / u)×\cos \theta)
ですので、ドップラー効果は、

 \displaystyle \nu’ = \nu×\frac{\sqrt{1 - v^2}}{1 - (v / u)×\cos \theta}
となります。

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