柵(しがらみ)なき重力論

自由に重力論を展開します。

深宇宙探査機の見かけの軌道、見かけの速度

地球から等加速度 a で宇宙の果てに向かう深宇宙探査機を見送ったとき、その軌道は、
 (x + (1 / a))^2 - t^2 = (1 / a)^2 (式1)

その速度は、
 \displaystyle v(t) = \frac{a×t}{\sqrt{1 + (a×t)^2}} (式2)
でした。((x,t) は地球を慣性系として見た座標です)

これらの軌道と速度は、地球を慣性系として、その系全体を見渡せる視点からの軌道と速度です。(「三つの視点・観測者」を参照ください)

実際には、地上にいる観測者にとって、深宇宙探査機が位置 x にいることを観測するのは、そこからの光が観測者に届いたときです。

 

まず、その時刻を求めてみましょう。
位置 x からの光が観測者に届くには、時間 dt=x がかかります。
深宇宙探査機が時刻 t に位置 x にいるとすると、それを観測者が観測する時刻 t_i は、
 t_i = t + dt = t + x
です。

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次に、観測者が観測する時刻に基づく深宇宙探査機の軌道を求めてみましょう。

 t = t_i - x
ですので、これを式1に代入し、t_ix の関係を求めます。(計算中、掛け算の記号は省略します)

 (x + (1 / a))^2 -t^2 = (1 / a)^2

 (x + (1 / a))^2 -(t_i - x)^2 = (1 / a)^2

 (x^2+2(1/a)x+(1/a)^2) - ({t_i}^2 - 2{t_i}x+x^2) = (1 / a)^2

 x^2+2(1/a)x+(1/a)^2 - {t_i}^2 + 2{t_i}x-x^2 = (1 / a)^2

 2(1/a)x − {t_i}^2 + 2{t_i}x = 0

 2(1/a)x+2{t_i}x = {t_i}^2

 2x( (1 / a) + {t_i}) = {t_i}^2

 \displaystyle x = \frac{{t_i}^2}{2( (1 / a) + {t_i})}

 \displaystyle = \frac{a{t_i}^2}{2(1 + a{t_i})}

 

これを、t_i微分すると、観測者が観測する深宇宙探査機の速度(v_i とします)になります。

以前の記事でも使った微分の公式\displaystyle \left( \left(\frac{f}{g}\right)’ = \frac{f’×g-f×g’}{f^2} \right)を使います。

 \displaystyle v_i = \frac{d}{dt_i} \frac{a{t_i}^2}{2(1 + at_i)}

 \displaystyle = \frac{(2at_i)(2(1 +at_i))-(a{t_i}^2)(2a)}{(2(1 + at_i))^2}

 \displaystyle = \frac{4at_i+ 4a^2{t_i}^2-2a^2{t_i}^2}{4(1 + at_i)^2}

 \displaystyle = \frac{4at_i+ 2a^2{t_i}^2}{4(1 + at_i)^2}

通分します。

 \displaystyle = \frac{2at_i+a^2{t_i}^2}{2(1 + at_i)^2}

式を簡単にするため、完全平方にできないか、変形します。

 \displaystyle = \frac{(1+ 2at_i+a^2{t_i}^2)-1}{2(1 + at_i)^2}

 \displaystyle = \frac{(1+at_i)^2-1}{2(1 + at_i)^2}

 \displaystyle = \frac{1}{2}-\frac{1}{2(1 +at_i)^2}

です。

t_i=0 のとき v_i=0ですので、深宇宙探査機が地球を出発するときには、観測者から見てその速度はゼロです。(当たり前ですね)

t_i が無限に近づくと、v_i\displaystyle \frac{1}{2} に近づきます。
あれっ、光速度v=1)に近づくんじゃないの? と思われるかもしれませんが、以前の記事にも書きましたが、遠ざかる物体の速度は遅く観測されるのです。(光速度近くで遠ざかる物体の速度は約半分に観測されます)

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