おなじみの「回転する円周の縮み」(2)
回転する円盤の円周の接線方向の速度を回転の角速度から計算してみます。
角速度を 、円周の半径を とすると、非相対論であれば、接線方向の速度 は、
(式1)
です。
しかし、相対論を考えると、円周によって速度が異なるということは、時間の流れが異なる、長さの縮尺が異なるということです。
そのため、式1の速度でそれぞれの円周が動くと、円盤がバラバラに裂けてしまうか、または(伸び縮みする材質でできていたなら)グニャグニャと曲がってしまいます。
円盤は「相対論的剛体」であるとします。
「相対論的剛体」とは、ローレンツ変換による長さの伸び縮みはあっても、内部に応力は生じす、材質としての伸び縮みがない剛体です。
半径 の円周の接線方向の速度を とします。
微小距離 だけ外側の円周の速度 は、速度の合成の式を使って、
と表せます。(掛け算の記号は省略します)
なぜ速度の合成の式を使うかというと、観測者から見て半径 の点が速度 で動いていて、その点から見て だけ外の点が速度 で動いているので、観測者から見た半径 の点の速度は、単純な足し算ではなく、速度の合成の式になるのです。
なお、 は円周の速度方向に垂直の長さですので、ローレンツ変換による縮はありません。
半径の増加による速度の増加の割合 は、
で求まります。
まず、 ですが、
です。
これを で割ると、
です。
とすると、
です。
ここまでをまとめると、
(式2)
です。
式2を変数分離で積分します。
以前、深宇宙探査機に乗って物体の動きを見るときの計算でも使いましたが、左辺の積分には双曲線関数の公式 を使います。
の逆関数をもとに戻して、
です。
つまり円盤の中心では、円周の接線方向の速度はゼロと考えられますから、
であり、 となります。
まとめると、角速度 で回転する円盤の円周の接線方向の速度 は、
です。(いつものことですが、光速度を1とする単位系です)