柵(しがらみ)なき重力論

自由に重力論を展開します。

近づいてくる・遠ざかっていく棒の長さの伸び縮み

動いている物体(棒)の長さを測るのは、簡単ではありません。

その一つの方法は、以前の記事にも書きましたが、観測者が棒とすれ違う際に、棒の先頭が通過した時刻と末尾が通過した時刻を記録し、その時刻の差×棒の速度で長さを求める方法です。(速度は知っていなければなりません)

もう一つの方法は、(ちょっと非現実的かもしれませんが)空間に目盛りがあることを想定し、棒の先頭が位置する座標と末尾の座標を同時刻に読むことです。

第1の方法は観測する位置を固定、第2の方法は観測する時刻を固定したものです。

 

第2の方法で棒の長さを測定した場合どうなるでしょうか。

観測者から見て、棒の末尾は先端より遠くにありますから、先端の位置を読んでから末尾の位置を読むまで時間差があります。

逆に言うと、同時に棒の先端と末尾を見たとき、末尾については、その時間差だけ過去の位置を見ることになります。(光が進むのに時間がかかりますから)

棒が動いていれば、その時間差で、棒が観測者に近づいています。

 

ちょっと計算してみましょう。

棒の本当の長さを l、速さを v とします。

まず、ローレンツ変換により
 l’ = l×\sqrt{1-v^2}
に縮んで見えます。(光速度を1とする単位系です)

棒の末尾が見える時間差を t とします。

この時間で、光は、l と、その間に棒が動いた距離 v×t を進みます。

ということで、観測者から見て、棒の末尾は先頭より l’+v×t だけ遠くに見えるのです。

これが、棒の先頭が位置する座標と末尾の座標を同時刻に読んだときの棒の長さになります。
その長さ l_i は、l_i = l’+v×t です。

一方、時間差 t は、その長さを光が進むのにかかった時間ですから、光速度を1とする単位系で \displaystyle t = \frac{l’+v×t}{1} = l_i です。

ふたつの式から、
 l_i = l’+v×t= l’+v×l_i
 l_i - v×l_i=l’
 l_i×(1 - v)=l’

 \displaystyle l_i=\frac{l’}{1 - v}

となります。

ということで、ローレンツ変換により縮んだ長さの \displaystyle \frac{1}{1-v} 倍に伸びて見えます。

棒の本当の長さ l に対しては、

 \displaystyle l_i=\frac{l’}{1 - v}

 \displaystyle l_i= l×\frac{\sqrt{1-v^2}}{1 - v}

 \displaystyle l_i= l×\frac{\sqrt{1-v}×\sqrt{1+v}}{\left(\sqrt{1 - v}\right)^2}

 \displaystyle l_i= l×\frac{\sqrt{1+v}}{\sqrt{1 - v}}

 \displaystyle l_i= l×\sqrt{\frac{1+v}{1 - v}}

です。

 

棒の速度が、光速度の10%なら、

 \displaystyle \sqrt{\frac{1.1}{0.9}}\approx\sqrt{1.2}\approx1.1

となり、約1割長く見えます。

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