柵(しがらみ)なき重力論

自由に重力論を展開します。

深宇宙探査機に指令が届くのはいつ

地上の重力加速度と同じ加速度 a で、地球から遠ざかる深宇宙探査機。
以前の記事で書きましたが、出発から1年後に地球から出された指令は、深宇宙探査機には届きません。

地球から見た深宇宙探査機の軌道は双曲線ですが、出発から1年後に地球から深宇宙探査機に向かって出された指令(電波、電磁波、光)は、その双曲線の漸近線になります。

双曲線と漸近線は、限りなく近づきますが、けっして交わりません。
指令は深宇宙探査機に届かないのです。

でも、出発から1年以内であれば、地球から出された指令は、深宇宙探査機に届くはず。
例えば、深宇宙探査機の出発から時間 t_s だけあとに地球から出された指令は、地球から見た時刻で、いつ、深宇宙探査機に届くのでしょうか。

地球から見た深宇宙探査機の軌道は、地球からの距離を x、出発してからの時間を t とすると、
 (x + (1/a))^2 - t^2 = (1/a)^2 (式1)
です。

時刻 t_s に地球から深宇宙探査機に向かって出された指令の軌跡は、
 x = t - t_s (式2)
です。

このふたつの軌跡の交点を求めれば、指令が深宇宙探査機に届く時刻と、そのときの深宇宙探査機の位置がわかります。

深宇宙探査機の位置を求めるほうが、計算が少しだけ楽なので、そうします。
式2を変形して、
 t = x + t_s (式3)
とします。

これを、式1に代入し、軌跡の交点の座標 (t_e, x_e) を求めます。
 (x + (1/a))^2 - t^2 = (1/a)^2

 (x_e + (1/a))^2 - (x_e + t_s)^2 = (1/a)^2

2乗を展開します。(掛け算の記号 × を省略します)
 ({x_e}^2 + 2(1/a)x_e + (1/a)^2) - ({x_e}^2 + 2x_et_s + {t_s}^2) = (1/a)^2

 {x_e}^2 + 2(1/a)x_e + (1/a)^2 - {x_e}^2 - 2x_et_s - {t_s}^2 = (1/a)^2

両辺から (1/a)^2 を引きます。
 {x_e}^2 + 2(1/a)x_e - {x_e}^2 - 2x_et_s - {t_s}^2 = 0

{x_e}^2 を差し引きします。
 2(1/a)x_e - 2x_et_s - {t_s}^2 = 0

x_e がかかる項を左辺、それ以外を右辺にまとめます。
 2(1/a)x_e - 2x_et_s = {t_s}^2
 2( (1/a) - t_s)x_e = {t_s}^2

x_e を求めます。

 \displaystyle x_e = \frac{{t_s}^2}{2( (1/a) - t_s)}

分子・分母に a を掛け、見やすくします。

 \displaystyle x_e = \frac{a×{t_s}^2}{2×(1 - a×t_s)}  (式4)

この結果を式3に代入し、t_e を求めます。
 t_e = x_e + t_s

 \displaystyle t_e = \frac{a×{t_s}^2}{2×(1 - a×t_s)} + t_s (式5)

指令が出されてから \displaystyle \frac{a×{t_s}^2}{2×(1 - a×t_s)} 後に、深宇宙探査機に指令が届くことがわかりました。

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t_s がゼロのときには、この時間間隔もゼロ。
t_s が大きくなるにつれ、この間隔は大きくなり、t_s = 1/a で無限大(追いつけない)になります。

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