柵(しがらみ)なき重力論

自由に重力論を展開します。

ブラックホールに行ってみる(1)

重力について関心のある人、研究している人なら、誰しも一度はブラックホールに行ってみたいと思うでしょう。

特に、シュワルツシルト半径を通過するときにどうなるのか、知りたいものです。

 

ただ、「強い重力で押し潰される」、「潮汐力で引き裂かれる」、「ブラックホールにはまると毛が三本しか残らない」など、怖い噂を聞きます。

なので、自分で行くのはちょっとやめておいて、勇気ある冒険者ブラックホールに行くのを、ここ、地球から眺めてみようと思います。

 

勇気ある冒険者は、地球から1000光年ぐらいの距離にあるブラックホールに向かいます。

ちょっと遠いようですが、1Gで地道に加速していけば、案外早く光速度の99.99%ぐらいに達します。(燃料は、宇宙空間にある水素原子を使う)

それでも1000年かかるのでは?

大丈夫です。ローレンツ収縮でブラックホールまでの距離が縮みますから、冒険者の時間で10年ぐらいで到達します。

でも、それを眺める地球の観測者は、数十世代、代々引き継いで観測を続けなければなりません。

 

さて、地球から見ると、冒険者は赤みを帯びて見えます。赤方偏移です。

最初は、地球から亜光速度で遠ざかることによるドップラー効果ですが、ブラックホールに近づくにつれ、重力ポテンシャルによる時間の伸びが効いてきます。

冒険者の動きはだんだんとゆっくりになり、シュワルツシルト半径に近づくと、地球から見て冒険者はほとんど動きません。

そして…。

 

相対性理論の解説書に「シュワルツシルト半径ではロケットは止まって見える」と書かれていることがありますが、止まっているロケットは見えないのです。

そこでは、地球から見ると、時間は止まっています。

そこからくる光の振動数はゼロ、波長は無限大。

地球からは、シュワルツシルト半径で冒険者がどうなっているかは、見えないのです。

 

何十世代、代々引き継いで観測してきたのに、その瞬間が見えないなんて!

 やはり、自分で行くしかないのか。(つづく)

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