柵(しがらみ)なき重力論

自由に重力論を展開します。

擦れ違う物体の速度(2)

昨日の記事で、物体が観測者とすれ違う場合の、観測者から見た物体の速度を求めました。

物体が観測者に近づいてくる位置にいるときには、

 \displaystyle \frac{v}{\sqrt{1+(r/x)^2}-v}

物体が観測者から離れていく位置にいるときには、

 \displaystyle \frac{v}{\sqrt{1+(r/x)^2}+v}

でした。
ここで、v は観測者がいる慣性系での物体の速度、x はすれ違い点から物体までの距離、rは観測者からすれ違い点までの距離です。

ただ、物体の位置を連続的に見るには、物体の位置によって式が分かれていないほうがよいです。

そこで、観測者から物体を見た角度 \theta を使って、ひとつの式で表してみます。

観測者がいる慣性系での物体の速度 v を、観測者に正面から向かう方向への成分と、それに垂直な成分に分解すると、観測者に正面から向かう方向への成分は v×\cos\theta です。

f:id:Dr9000:20200803101743j:plain

\cos\theta は、\theta\pi/2(90度) を挟んで正負が入れ替わります。

物体が観測者に近づいてくる位置にいるときには \theta\lt \pi/2、すれ違うときには \theta = \pi/2、観測者から離れていく位置にいるときには \theta\gt \pi/2 となります。

観測者に正面から向かう方向への成分で、観測者から見た物体の速度 v_i を表すと、

 \displaystyle v_i=\frac{v×\cos\theta}{1- v×\cos\theta}

となります。

これは、以前の記事「向かってくる物体は超光速にも見える」で求めた、物体が正面から観測者に近づく場合の式で、速度 v v×\cos\theta で置き換えたものです。

さて、

 \displaystyle v_i=\frac{v×\cos\theta}{1- v×\cos\theta}

の分子・分母を \cos\theta で割って、

 \displaystyle v_i=\frac{v}{(1/\cos\theta)- v}

ですが、\cos\theta は、物体が観測者に近づいてくる位置にいるときには、

 \displaystyle \cos\theta=\frac{x}{\sqrt{x^2+r^2}}

1/\cos\theta は、

 \displaystyle 1/\cos\theta=\frac{\sqrt{x^2+r^2}}{x}

 \displaystyle =\sqrt{\frac{x^2+r^2}{x^2}}

 \displaystyle =\sqrt{1+r^2/x^2}
ですので、

 \displaystyle v_i=\frac{v×\cos\theta}{1- v×\cos\theta}

 \displaystyle =\frac{v}{(1/\cos\theta)- v}

 \displaystyle =\frac{v}{\sqrt{1+r^2/x^2}- v}

となり、昨日求めた式と一致します。

物体が観測者から離れていく位置にいるときも同じです。

f:id:Dr9000:20200802190909j:plain