柵(しがらみ)なき重力論

自由に重力論を展開します。

擦れ違う物体の速度(1)

観測者に向かってくる・離れていく物体の速度について、何回か記事を書きました。

物体の速度(観測者がいる慣性系に対する速度)が v のとき、正面から向かってくる物体を観測者から見た速度は、

 \displaystyle \frac{v}{1-v}

離れていく物体を見た速度は

 \displaystyle \frac{v}{1+v}

となります。

でも、正面から向かってくると、そのまま観測者にぶつかりますよね。
そこで、衝突しないように観測者と少し離れてすれ違うことを考えてみます。

観測者がいる慣性系から見た物体の速度を v とします。

観測者がいる位置から物体の軌道(直線)に垂線を下し、その垂線の足を「物体のすれ違い点」と呼ぶことにします。
すれ違い点は、物体が最も観測者に近づく点です。

その垂線の長さを r とします。

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まず、物体が観測者に近づいてくる位置にいる場合です。

時刻 t のときに、物体がすれ違い点から距離 x にいるとします。

それから時間 dt だけ経た時刻 t+dt ときに、物体が距離 dx だけ進み、すれ違い点から x=x-dx の距離にいるとします。(物体が観測者に近づいてくる位置にいるので、すれ違い点までの距離は dx だけ短くなっています)

慣性系から見た物体の速度が v ですので、
 \displaystyle dx/dt=v
です。

時刻 t のときの物体から観測者までの距離 l_1 は、
 \displaystyle l_1=\sqrt{x^2+r^2}
また、時刻 t=t+dt のときの物体から観測者までの距離 l_2 は、
 \displaystyle l_2=\sqrt{(x-dx)^2+r^2}
です。

物体がすれ違い点から距離 x にいることを観測者が知る時刻は、そこに物体がいるという情報が観測者に届くまでに時間 l_1 がかかりますから、t+l_1 です。 (光速度を1とする単位系を使っていますので、光が l_1 進むのにかかる時間は、\displaystyle \frac{l_1}{1}=l_1 です)

また、物体がすれ違い点から距離 x-dx にいることを観測者が知る時刻は、t+dx+l_2 です。

このふたつの時刻の間 (t+dx+l_2)-(t+l_1) に、物体は l_1-l_2 だけ観測者に近づています。

観測者から見たその間の物体の平均速度は、

 \displaystyle \frac{l_1-l_2}{(t+dx+l_2)-(t+l_1)}

です。

ここで、dx をゼロに近づけると、位置 x における、観測者から見た物体の速度 v_i になります。

 \displaystyle v_i= \lim_{dx \to 0}\frac{l_1-l_2}{(t+dt+l_2)-(t+l_1)}

 \displaystyle =\lim_{dx \to 0}\frac{l_1-l_2}{dt-(l_1-l_2)}

l_1l_2平方根なので、計算を簡単にするため、分子・分母に l_1+l_2 を掛けます。

 \displaystyle v_i= \lim_{dx \to 0}\frac{(l_1-l_2)×(l_1+l_2)}{dt×(l_1+l_2)-(l_1-l_2)×(l_1+l_2)}

 \displaystyle =\lim_{dx \to 0}\frac{l_1^2-l_2^2}{dt×(l_1+l_2)-(l_1^2-l_2^2)}

です。

ここで、
 l_1^2-l_2^2

 \displaystyle =\left(\sqrt{x^2+r^2}\right)^2-\left(\sqrt{(x-dx)^2+r^2}\right)^2

 =(x^2+r^2)-((x-dx)^2+r^2)
 =(x^2+r^2)-((x^2-2×x×dx+dx^2)+r^2)
 =2×x×dx-dx^2
ですので、

 \displaystyle v_i=\lim_{dx \to 0}\frac{l_1^2-l_2^2}{dt×(l_1+l_2)-(l_1^2-l_2^2)}

 \displaystyle =\lim_{dx \to 0}\frac{2×x×dx-dx^2}{dt×(l_1+l_2)-(2×x×dx-dx^2)}

となります。

分子・分母を dt で割り、dx/dt=v を適用します。

 \displaystyle v_i=\lim_{dt \to 0}\frac{2×x×dx-dx^2}{dt×(l_1+l_2)-(2×x×dx-dx^2)}

 \displaystyle =\lim_{dx \to 0}\frac{2×x×(dx/dt)-(dx/dt)×dx}{(l_1+l_2)-(2×x×(dx/dt)-(dx/dt)×dx)}

 \displaystyle =\lim_{dx \to 0}\frac{2×x×v-v×dx}{(\sqrt{x^2+r^2}+\sqrt{(x-dx)^2+r^2})-(2×x×v-v×dx)}

dx をゼロにします。

 \displaystyle v_i=\frac{2×x×v-v×0}{(\sqrt{x^2+r^2}+\sqrt{(x-0)^2+r^2})-(2×x×v-v×0)}

 \displaystyle =\frac{2×x×v}{(\sqrt{x^2+r^2}+\sqrt{x^2+r^2})-(2×x×v)}

 \displaystyle =\frac{2×x×v}{2×\sqrt{x^2+r^2}-(2×x×v)}

分子・分母を2で割り、

 \displaystyle v_i=\frac{x×v}{\sqrt{x^2+r^2}-(x×v)}

分子・分母を x で割り、

 \displaystyle v_i=\frac{v}{\sqrt{1+(r/x)^2}-v}

となります。

 

次に、物体が観測者から離れていく位置にいる場合ですが、同様に計算して、

 \displaystyle v_i=\frac{v}{\sqrt{1+(r/x)^2}+v}

となります。

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