〇行差
雨が上から降っているとき、傘は上向きに差します。
少し速足で歩くと、雨は前方斜めから降ってくるようになるので、傘も斜め前に差します。
これが、雨でなく、光でも同じ現象が起きること、つまり、速く動くと光が前方斜めから来るようになることが「光行差」です。(実際に光が前方斜めから来ることを観測するには、光速度に見合う速度で動く必要があります)
雨の例のとおり「光行差」は光以外でも起きます。
この現象を何と呼べばよいのでしょう。「〇行差」ですね。
どれぐらい斜めになるのか、計算してみましょう。
降っている雨または光(またはその他の物体)に対して、止まっている観測者と動いている観測者とは、それぞれ別の慣性系にいます。
その物体の速度(速さと方向)の計算には、速度合成の式を使います。
、
、
観測者の座標を適当に選んで、物体が 平面で動いていると考えます。 です。
止まっている観測者にとっての物体(または光)の速度 と角度 が
、
の関係にあるとします。
軸方向に速度 で動いている観測者にとっての物体の速度 と角度 は
なので、
となります。
具体的な数値で見てみましょう。
止まっている観測者にとって、遠くの天体が真横()に見えていた()とします。
光速度の50%()で動いている観測者にとっては、
となり、60度の角度で見えることになります。
同じく、光速度の90%()で動いている観測者にとっては、
となり、25度の角度で見えることになります。
ちなみに、雨(メートル/秒)の中を速歩き(メートル/秒)すると(ガリレイ変換になります)、
となり、74.5度の角度で傘を構えなければなりません。