柵(しがらみ)なき重力論

自由に重力論を展開します。

〇行差

雨が上から降っているとき、傘は上向きに差します。

少し速足で歩くと、雨は前方斜めから降ってくるようになるので、傘も斜め前に差します。

これが、雨でなく、光でも同じ現象が起きること、つまり、速く動くと光が前方斜めから来るようになることが「光行差」です。(実際に光が前方斜めから来ることを観測するには、光速度に見合う速度で動く必要があります)

雨の例のとおり「光行差」は光以外でも起きます。
この現象を何と呼べばよいのでしょう。「〇行差」ですね。

 

どれぐらい斜めになるのか、計算してみましょう。

降っている雨または光(またはその他の物体)に対して、止まっている観測者と動いている観測者とは、それぞれ別の慣性系にいます。

その物体の速度(速さと方向)の計算には、速度合成の式を使います。

 \displaystyle w_x = \frac{u_x + v_x}{1 + u_x×v_x}

 \displaystyle w_y = \frac{u_y×\sqrt{1 - {v_x}^2}}{1 + u_x×v_x}

 \displaystyle w_z = \frac{u_z×\sqrt{1 - {v_x}^2}}{1 + u_x×v_x}

観測者の座標を適当に選んで、物体が x-y 平面で動いていると考えます。w_z=u_z=0 です。

 

止まっている観測者にとっての物体(または光)の速度 u と角度 \theta

 u_x=u×\cos\thetau_y=u×\sin\theta

の関係にあるとします。

x 軸方向に速度 v で動いている観測者にとっての物体の速度 w と角度 \phi

 \displaystyle \tan \phi = \frac{w_y}{w_x}

 \displaystyle = \frac{u_y×\sqrt{1 - {v}^2}}{u_x + v}

 \displaystyle = \frac{u×\sin\theta×\sqrt{1 - {v}^2}}{u×\cos\theta + v}

なので、

 \displaystyle \phi = \tan^{-1}\left(\frac{u×\sin\theta×\sqrt{1 - {v}^2}}{u×\cos\theta + v}\right)

となります。

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具体的な数値で見てみましょう。

止まっている観測者にとって、遠くの天体が真横(\theta=90^{\circ})に見えていた(u = 1)とします。

光速度の50%(v=0.5)で動いている観測者にとっては、

 \displaystyle \tan \phi =  \frac{u×\sin\theta×\sqrt{1 - {v}^2}}{u×\cos\theta + v}

 \displaystyle = \frac{1×\sin(90^{\circ})×\sqrt{1 - {0.5}^2}}{1×\cos(90^{\circ}) + 0.5}

 \displaystyle = \frac{\sqrt{0.75}}{0.5} \approx 1.73

 \displaystyle \phi = \tan^{-1}(1.73) = 60^{\circ}

となり、60度の角度で見えることになります。

同じく、光速度の90%(v=0.9)で動いている観測者にとっては、

 \displaystyle = \frac{1×\sin(90^{\circ})×\sqrt{1 - {0.9}^2}}{1×\cos(90^{\circ}) + 0.9}

 \displaystyle = \frac{\sqrt{0.19}}{0.9} \approx 0.48

 \displaystyle \phi = \tan^{-1}(0.48) \approx 25^{\circ}

となり、25度の角度で見えることになります。

 

ちなみに、雨(u=6.5メートル/秒)の中を速歩き(v = 1.8メートル/秒)すると(ガリレイ変換になります)、

 \displaystyle \tan \phi =  \frac{u×\sin\theta}{u×\cos\theta + v}

 \displaystyle = \frac{6.5×\sin(90^{\circ})}{6.5×\cos(90^{\circ}) + 1.8}

 \displaystyle = \frac{6.5}{1.8} \approx 3.6

 \displaystyle \phi = \tan^{-1}(3.6) \approx 74.5^{\circ}

となり、74.5度の角度で傘を構えなければなりません。