柵(しがらみ)なき重力論

自由に重力論を展開します。

合成速度が光速を超えない(1)

速度の合成とは、ある系(慣性系)Aで観測した物体の速度が u であるとき、その系に対して速度 v で動いている系A'で観測したその物体の速度 w はどうなるか、ということです。

ニュートン力学ガリレイ変換)では、速度 v の方向(x 軸方向とします)では足し算となり、垂直な方向(y 軸方向、z 軸方向)の速度は変わらりません。

アインシュタイン特殊相対性理論ローレンツ変換)では、速度 v の方向では単純な足し算ではなく、垂直方向の速度も変わります。式にすると、

 \displaystyle w_x = \frac{u_x + v_x}{1 + u_x×v_x}、 (式1)

 \displaystyle w_y = \frac{u_y×\sqrt{1 - {v_x}^2}}{1 + u_x×v_x}

 \displaystyle w_z = \frac{u_z×\sqrt{1 - {v_x}^2}}{1 + u_x×v_x}

です。

 

速度 v の方向の速度は、ガリレイ変換だと光速度を超えることもあります。例えば、v_x光速度の60%(0.6)、u_x光速度の80%(0.8)とすると、合成速度は光速度の140%(1.4)になります。

ローレンツ変換だと、(0.6 + 0.8)/(1 + 0.6×0.8)=1.4/1.48で、光速度の約95%になります。

このように、具体的な数値を入れると光速度を超えないことがわかりますが、元の速度が光速度未満ならどのような数値を合成しても光速度を超えないのでしょうか。
ちょっと計算してみましょう。

式1の分子^2<分母^2 なら、-1<分子/分母<1ですので、合成速度は光速度を超えません。
式1の 分子^2 を左辺、分母^2 を右辺として比べます。
 分子^2:分母^2
 (u_x + v_x)^2:(1 + u_x×v_x)^2
2乗を展開して、(掛け算記号×は省略)
 {u_x}^2 + 2u_xv_x + {v_x}^2:1 + 2u_xv_x + {u_x}^2{v_x}^2
両辺から共通する  2u_xv_x を引いて、
 {u_x}^2 + {v_x}^2:1 + {u_x}^2{v_x}^2
{v_x}^2 がかかる項を左辺に、それ以外の項を右辺に移項して、
 {v_x}^2 -  {u_x}^2{v_x}^2:1 - {u_x}^2
 {v_x}^2(1 -  {u_x}^2):1 - {u_x}^2
1 - {u_x}^2 はゼロより大きい(u_x光速度未満)ので、両辺を 1 - {u_x}^2 で割って、
 {v_x}^2:1
です。

{v_x}^2 は1より小さい(v_x光速度未満)ので、
 {v_x}^2<1
となり、元の左辺<右辺、つまり式1の分子^2<分母^2-1<分子/分母<1 とわかりました。

x 軸方向の速度は、元の速度が光速度未満ならどのような数値を合成しても光速度を超えません。(つづく)

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