柵(しがらみ)なき重力論

自由に重力論を展開します。

おなじみの「速度の合成」

アインシュタイン特殊相対性理論による速度の合成には、驚くべきことが二つあります。

ちょっとびっくり:単純な足し算じゃない

とってもびっくり:垂直方向の速度も変わる!

 

速度の合成とは、ある系(慣性系)Aで観測した物体の速度がuであるとき、その系に対して速度vで動いている系A'で観測したその物体の速度wはどうなるか。

例えば、河川で草野球をしているピッチャーの投げた球の速度がuであるとき、それをそばを通る新幹線の中から見たときの球の速度wはどうなるか、ということです。

ニュートン力学ガリレイ変換)
 x’ = x - v×ty’ = yz’ = z
では、速度の変換は、
 w_x = u_x + v_xw_y = u_yw_z = u_z
となります。

ここで(u_x, u_y, u_z)(w_x, w_y, w_z)は、それぞれ速度uwx軸方向の成分、y軸方向の成分、z軸方向の成分です。

ガリレイ変換の変換の前提条件は
・系Aと系A’は、空間の直行する3軸(x軸、y軸、z軸)の方向が一致
・3軸の原点(0, 0, 0)が一致
・系A’は、系Aから見て、x軸方向へ等速度vで動いている
です。

 

特殊相対論(ローレンツ変換)ではどうなるでしょうか。 

系Aに対し系A'がx軸方向に速度v_xで動いている(y軸方向、z軸方向の速度はゼロ)ときのローレンツ変換は、
 t = \gamma×(t' - v_x×x')
 x = \gamma×(x' - v_x×t')
 y = y'z = z'
 (\displaystyle \gamma \equiv \frac {1}{\sqrt {1-v_x^2}}
です。

このローレンツ変換の前提条件は、上記のガリレイ変換の条件に加えて、
・系Aと系A’は、時間軸の方向も一致
・時間軸の原点も一致
です。

 

まずx軸方向。系の相対速度の方向です。

系Aで、時刻 = 0 で x座標 = 0 にあった物体は、時刻 = tx座標 = u_x×t にあります。式にすると、
 x = u_x×t (式1)
です。

これを系A'で見ると、時刻 = 0 で x座標 = 0 にあった物体が、時刻 = t'x座標 = w_x×t' にあったとします。式にすると、
 x' = w_x×t' (式2)
です。

式1にxtに関するローレンツ変換を適用して、
 \gamma×(x' - v_x×t') = u_x×\gamma×(t' - v_x×x')

 両辺を\gammaで割って、()内を展開して、
 x' - v_x×t' = u_x×t' + u_x×v_x×x'

x'に関するを左辺に、t'に関する項を右辺に移します。
 x' + u_x×v_x×x' = u_x×t' + v_x×t'

x't'でくくって、
 (1 + u_x×v)×x' = (u_x + v_x)×t'

x'に関する式に直して、

 \displaystyle x' = \frac{u_x + v_x}{1 + u_x×v_x}×t' (式3)

式2と比較すると、

 \displaystyle w_x = \frac{u_x + v_x}{1 + u_x×v_x}

となります。

単純な足し算じゃなくなるんですね。

 

次にy軸方向。系の相対速度の垂直方向です。

系Aで、時刻 = 0 で x座標 = 0 にあった物体は、時刻 = ty座標 = u_y×t にあります。式にすると、
 y = u_y×t (式4)

系A'で見ると、時刻 = 0 で y座標 = 0 にあった物体が、時刻 = t'y座標 = w_y×t'にあったとします。式にすると、
 y' = w_y×t' (式5)
とします。

式4にytに関するローレンツ変換を適用して、
 y' = u_y×\gamma×(t' - v_x×x') (式6)
です。

このうち、 (t' - v_x×x')について、x'に、式3を代入します。

 \displaystyle (t' - v_x×x') = (t' - v_x×\frac{u_x + v_x}{1 + u_x×v_x}×t')

t'でくくります。

 \displaystyle \left(1 - v_x×\frac{u_x + v_x}{1 + u_x×v_x}\right)×t'

 = \displaystyle \left(1 - \frac{u_x×v_x + v_x^2}{1 + u_x×v_x}\right)×t'

通分します。

 \displaystyle \frac{(1 + u_x×v_x) - (u_x×v_x + v_x^2)}{1 + u_x×v_x}×t'

 \displaystyle = \frac{1 - v_x^2}{1 + u_x×v_x}×t'

式6に戻します。
 y' = u_y×\gamma×(t' - v_x×x')

 \displaystyle = u_y×\gamma×\frac{1 - v_x^2}{1 + u_x×v_x}×t'

\gammaを展開します。

 \displaystyle y' = u_y×\frac {1}{\sqrt {1-v_x^2}}×\frac{1 - v_x^2}{1 + u_x×v_x}×t'

 \displaystyle y' = u_y×\frac{\sqrt{1 - v_x^2}}{1 + u_x×v_x}×t' (式7)

式5と比較すると、

 \displaystyle w_y = u_y×\frac{\sqrt{1 - v_x^2}}{1 + u_x×v_x}

 \displaystyle = \frac{u_y×\sqrt{1 - v_x^2}}{1 + u_x×v_x}

となります。

垂直方向の速度も変わるんですね。

z軸方向も同じようにして、

 \displaystyle w_z = \frac{u_z×\sqrt{1 - v_x^2}}{1 + u_x×v_x}

となります。

 

まとめると、

 \displaystyle w_x = \frac{u_x + v_x}{1 + u_x×v_x}

 \displaystyle w_y = \frac{u_y×\sqrt{1 - v_x^2}}{1 + u_x×v_x}

 \displaystyle w_z = \frac{u_z×\sqrt{1 - v_x^2}}{1 + u_x×v_x}

です。

 

u_xv_xのどちらかが1だと、w_xも1になります。
u_xv_xの両方が1だと、w_xも1になります。
u_xv_xの両方が1未満だと、w_xも1未満になります。
v_xが1だと、w_yw_zもゼロになります。
u_xv_xが非常に小さい(<<1)と、ガリレイ変換で近似できます。

合成された速度が1を超えることはありません。

速度=1は、光速度のことです。

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