重力について関心のある人、研究している人なら、誰しも一度は宇宙の果てに行ってみたいと思うでしょう。
でも、そこがどうなっているのか、そこに行くのにどれくらいの時間がかかるのか、そもそも「果て」があるのかもわかりません。
そこで、まずは深宇宙探査機を飛ばして、それを地球から眺めてみようと思います。
深宇宙探査機は、一定の加速度 で宇宙の果てに向かいます。
これを地球から見たときの加速度はどうなるでしょうか。
地球から見ても一定の加速度で加速し、やがて光速度を超えてしまうのでしょうか。
計算してみましょう。(このあと、ちょっと計算がつづきます)
地球から見て、ある時刻 での深宇宙探査機の速度を とします。
(後日追記:「地球から見て」は、細かく言うと「地球が静止していると考えられる慣性系から見て」です。以下「地球から見て」と書きます)
そのときの、地球から見た深宇宙探査機の加速度 を考えます。
加速度とは単位時間あたりの速度の変化です。
微小時間 での速度の変化は、変化後の速度-変化前の速度で、式にすると、
です。
これを で割ると、単位時間あたりの速度の変化になります。
(式1)
ここで、 を限りなくゼロに近づけたものが、時刻 での加速度 になります。式にすると、
です。微分式で書くと、
(式2)
となります。
地球から見た深宇宙探査機の速度 はどういう値になるでしょう。
深宇宙探査機自体の加速度は で一定です。
深宇宙探査機自体の微小時間 だけ加速すると、速度は だけ増えます。
これを地球から見ると、まず、速度の増加は単純な足し算ではなく、特殊相対論(ローレンツ変換)による速度の合成となります。
式にすると、
です。
地球から見た深宇宙探査機の速度の変化は、
です。
また、地球から見ると、深宇宙探査機自体の時間は伸びています。
式にすると、
です。(あれっ、時間が伸びているのに が より小さくなる? と思われるかもしれませんが、例えば、地球で10年経ってるのに深宇宙探査機では1年しか経っていない、ということです)
地球から見た速度の変化を地球の時間で書くと、
となります。
式1に代入して、地球から見た単位時間での速度の変化は、
です。
ここで、微小時間 をゼロに近づけると、分母の中の もゼロに近づき、分母全体は実質的に になります。
ということで、式2を使い、
(式3)
です。
この式3でわかることは、地球から見た深宇宙探査機の加速度 は、球から見た深宇宙探査機の速度 が大きくなるにつれ、どんどん小さくなっていくということです。
速度 が光速度 に近づくと、加速度はほとんどゼロになります。
「速度が光速度に近づくと質量(相対論的質量)が大きくなるので加速しにくくなる」という説明を見かけることがありますが、加速しにくくなるのは、速度の合成と時間の伸びのせいですね。(つづく)