柵(しがらみ)なき重力論

自由に重力論を展開します。

深宇宙探査機を見送る(1)

重力について関心のある人、研究している人なら、誰しも一度は宇宙の果てに行ってみたいと思うでしょう。

でも、そこがどうなっているのか、そこに行くのにどれくらいの時間がかかるのか、そもそも「果て」があるのかもわかりません。

そこで、まずは深宇宙探査機を飛ばして、それを地球から眺めてみようと思います。

深宇宙探査機は、一定の加速度 a で宇宙の果てに向かいます。
これを地球から見たときの加速度はどうなるでしょうか。
地球から見ても一定の加速度で加速し、やがて光速度を超えてしまうのでしょうか。

計算してみましょう。(このあと、ちょっと計算がつづきます)

 

地球から見て、ある時刻 t での深宇宙探査機の速度を v(t) とします。
(後日追記:「地球から見て」は、細かく言うと「地球が静止していると考えられる慣性系から見て」です。以下「地球から見て」と書きます)
そのときの、地球から見た深宇宙探査機の加速度 \alpha(t) を考えます。
加速度とは単位時間あたりの速度の変化です。

微小時間 {_\Delta t} での速度の変化は、変化後の速度-変化前の速度で、式にすると、
 v(t + {_\Delta t}) - v(t)
です。

これを {_\Delta t} で割ると、単位時間あたりの速度の変化になります。
 (v(t + {_\Delta }t) - v(t)) / {_\Delta t} (式1)

ここで、{_\Delta t} を限りなくゼロに近づけたものが、時刻 t での加速度 \alpha(t) になります。式にすると、

 \displaystyle \alpha(t) = \lim_{_\Delta t \to 0}(v(t + {_\Delta t}) - v(t)) / {_\Delta t}

です。微分式で書くと、

 \displaystyle \alpha(t) = \frac{d}{dt}v(t) (式2)

となります。

 

地球から見た深宇宙探査機の速度 v(t + {_\Delta t}) はどういう値になるでしょう。
深宇宙探査機自体の加速度は a で一定です。
深宇宙探査機自体の微小時間 {_\Delta \tau} だけ加速すると、速度は a×{_\Delta \tau} だけ増えます。

これを地球から見ると、まず、速度の増加は単純な足し算ではなく、特殊相対論(ローレンツ変換)による速度の合成となります。
式にすると、
 \displaystyle v(t + {_\Delta t}) = \frac{v(t) + (a×{_\Delta \tau})}{1 + v(t)× (a×{_\Delta \tau})}
です。

地球から見た深宇宙探査機の速度の変化は、
 v(t + {_\Delta t}) - v(t)

 \displaystyle = \frac{v(t) + (a×{_\Delta \tau})}{1 + v(t)×(a×{_\Delta \tau})} - v(t)

 \displaystyle = \frac{v(t) + (a×{_\Delta \tau}) - (v(t) + v(t)^2× (a×{_\Delta \tau})}{1 + v(t)× (a×{_\Delta \tau})}

 \displaystyle = \frac{(a×{_\Delta \tau}) - v(t)^2×(a×{_\Delta \tau})}{1 + v(t)× (a×{_\Delta \tau})}

 \displaystyle = \frac{(a×{_\Delta \tau})×(1 - v(t)^2)}{1 + v(t)×(a×{_\Delta \tau})}

です。

また、地球から見ると、深宇宙探査機自体の時間は伸びています。
式にすると、
 {_\Delta \tau} = {_\Delta t}×\sqrt{1 - v(t)^2}
です。(あれっ、時間が伸びているのに {_\Delta \tau}{_\Delta t} より小さくなる? と思われるかもしれませんが、例えば、地球で10年経ってるのに深宇宙探査機では1年しか経っていない、ということです)

地球から見た速度の変化を地球の時間{_\Delta t}で書くと、
 v(t + {_\Delta t}) - v(t)

 \displaystyle = \frac{(a×{_\Delta t}×\sqrt{1 - v(t)^2})×(1 - v(t)^2)}{1 + v(t)× (a×{_\Delta t}×\sqrt{1 - v(t)^2})}

 \displaystyle = \frac{(a×{_\Delta t}×\left(\sqrt{1 - v(t)^2}\right)^3)}{1 + v(t)×(a×{_\Delta t}×\sqrt{1 - v(t)^2})}

となります。

式1に代入して、地球から見た単位時間での速度の変化は、
 (v(t + {_\Delta t}) - v(t)) / {_\Delta t}

 \displaystyle = (\frac{a×{_\Delta t}×\left(\sqrt{1 - v(t)^2}\right)^3}{1 + v(t)×(a×{_\Delta t}×\sqrt{1 - v(t)^2})}) / {_\Delta t}

 \displaystyle = \frac{a×\left(\sqrt{1 - v(t)^2}\right)^3}{1 + v(t)×(a×{_\Delta t}×\sqrt{1 - v(t)^2})}
です。

ここで、微小時間 {_\Delta t} をゼロに近づけると、分母の中の v(t)×(a×{_\Delta t}×\sqrt{1 - v(t)^2}) もゼロに近づき、分母全体は実質的に 1 になります。

ということで、式2を使い、

 \displaystyle \alpha(t) = \frac{d}{dt}v(t) = a×\left(\sqrt{1 - v(t)^2 }\right)^3 (式3)

です。

この式3でわかることは、地球から見た深宇宙探査機の加速度 \alpha(t) は、球から見た深宇宙探査機の速度 v(t) が大きくなるにつれ、どんどん小さくなっていくということです。

速度 v(t)光速度 v = 1 に近づくと、加速度はほとんどゼロになります。

 

「速度が光速度に近づくと質量(相対論的質量)が大きくなるので加速しにくくなる」という説明を見かけることがありますが、加速しにくくなるのは、速度の合成と時間の伸びのせいですね。(つづく) 

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