柵(しがらみ)なき重力論

自由に重力論を展開します。

離れていく物体の時間をグラフで考える(1)

観測者から離れていく物体での時間がどう見えるか、グラフで考えてみます。

観測者から見た物体の軌道を x=v×t とします。(時刻 t=0 で位置 x=0 に物体があります)

x は物体の位置、v は物体の速度、t は観測者の座標での時刻です。

 物体から観測者に向かって光が2回放たれ、観測者に時刻 t=t_1t=t_1+dt に着いたとします。

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2回の光の軌道は、それぞれ、x=-t+t_1x=-t+dt+t_1 です。

物体が光を放った時刻をそれぞれ t=t_1’t_1’+dt’ とすると、それらは光の軌道と物体の軌道との交点から求まります。

x=v×tx=-t+t_1 との交点から、

 v×t_1’= -t_1’+t_1

 v×t_1’+t_1'= t_1

 t_1’×(1+v)= t_1

 \displaystyle t_1’=\frac{t_1}{1+v} (式1)

です。
x=v×tx=-t+dt-t_1 との交点から、同じようにして、

 \displaystyle t_1’+dt’=\frac{t_1+dt}{1+v} (式2)

です。

物体が光を放った時間間隔 dt' と観測者が光を受け取った時間間隔 dt との違いが、時間の進みの違いになります。

式2から式1を辺々差し引くと

 \displaystyle (t_1’+dt’)-(t_1’)=\frac{t_1+dt}{1+v}-\frac{t_1}{1+v}

 \displaystyle dt’=\frac{dt}{1+v} (式3)

となります。

観測者から見た物体での経過時間は、\displaystyle \frac{1}{1+v} 倍になっていることがわかります。

ただし、式3の dt’ は観測者の座標で測った時間ですので、特殊相対性理論ローレンツ変換)が考慮されていません。

物体での経過時間は物体での座標で測ります。

物体が光を放った2点間の世界距離は、等速運動する物体にとっては位置は変わっていませんから、その時間間隔を d\tau とすると d\tau^2 です。

一方、観測者から見た世界距離は、時間間隔が dt’、空間間隔が dx=v×dt’ ですので、dt’^2-(v×dt’)^2 です。(われわれの時空間はミンコフスキー空間です)

世界間隔はどの座標から見ても同じですから、

 d\tau^2= dt’^2-(v×dt’)^2= dt’^2×(1-v^2)

 d\tau=dt’×\sqrt{1-v^2} (式4)

です。

式4と式3を合わせて、

 \displaystyle d\tau=\frac{dt×\sqrt{1-v^2}}{1+v}

となります。

観測者から見た物体での経過時間は、\displaystyle \frac{\sqrt{1-v^2}}{1+v} 倍になることがわかりました。

 

観測者に近づいてくる物体では、その軌道が x=-v×t+C です(時刻 t=0 で位置 x=C に物体があります)ので、離れていく場合と同じように考えて、観測者から見た物体での経過時間は、\displaystyle \frac{\sqrt{1-v^2}}{1-v} 倍になります。

 

以前の記事「向かってくる・遠ざかっていく物体の時間の伸び縮み」で考えたと同じ結果になりました。

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