柵(しがらみ)なき重力論

自由に重力論を展開します。

加速度と速度の変化の方向が異なる

自由落下する物体の加速度の方向と重力加速度の方向とは必ずしも一致しません。

アインシュタイン等価原理を使って考えます。

加速運動する観測者から静止している物体を見ると、自由落下してくるように見えます。

その際の物体の速度は、以前の記事で調べました。

x軸方向(観測者の加速度の反対方向つまり物体が自由落下していく方向)の速度は、
 u_x(t) = \tanh(a×t + C) (式1)
でした。

ここで Cは、時刻 t=0 のときの物体の速度 u_x(0) について、
 u_x(0) = \tanh(C)
です。u_x(0)=0 なら C=0 です。

x軸方向の速度は時刻 t とともに増加し、1=光速度に近づきます。

また、y軸方向(観測者の加速度に対する垂直方向)の速度は
 \displaystyle u_y(t) = \frac{D}{\cosh(a×t + C)} (式2)
でした。

ここで Dは、時刻 t=0 のときの物体の速度 u_y(0) について、
 \displaystyle u_y(0) = \frac{D}{\cosh(C)}
です。

y軸方向の速度は時刻 t とともに減少し、ゼロに近づきます。

u_y(0) がゼロであれば、y軸方向の速度は変化せずゼロのままです。
u_y(0) がゼロでない場合、y軸方向の速度が変化します。

観測者の加速度に対する垂直方向の速度が変化するということは、物体の速度の変化の方向は、自由落下を引き超す加速度の方向(観測者の加速度の反対方向)とは一致しないということです。

どの程度ずれるのでしょうか。

式1を微分して自由落下する物体のx軸方向の速度の変化 \alpha_x を出します。(u_x(0)=0 としておきます)

 \displaystyle \alpha_x(t)= \frac{d}{dt}\tanh(a×t)

 \displaystyle =\frac{a}{\cosh^2(a×t)}

また式2を微分してy軸方向の速度の変化 \alpha_y を出します。

 \displaystyle \alpha_y(t)= \frac{d}{dt}\frac{D}{\cosh(a×t)}

 \displaystyle =-\frac{D×a×\tanh(a×t)}{\cosh(a×t)}

x軸方向の速度の変化とy軸方向の速度の変化の比は、 自由落下を引き超す加速度の方向と実際の物体の速度の変化の方向との角度 \theta を示します。

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その値は、

 \displaystyle \tan\theta = \frac{D×a×\tanh(a×t)}{\cosh(a×t)}÷\frac{a}{\cosh^2(a×t)}

 \displaystyle = \frac{D×\tanh(a×t)}{\cosh(a×t)}×\cosh^2(a×t)

 \displaystyle =D×\tanh(a×t)×\cosh(a×t)

 \displaystyle =D×\frac{\sinh(a×t)}{\cosh(a×t)}×\cosh(a×t)

 \displaystyle =D×\sinh(a×t)
となります。

また、式1、2から

 \displaystyle \frac{u_x(t)}{u_y(t)}= \tanh(a×t)÷\frac{D}{\cosh(a×t)}

 \displaystyle = \frac{\sinh(a×t)}{\cosh(a×t)}×\frac{\cosh(a×t)}{D}

 \displaystyle = \frac{\sinh(a×t)}{D}

なので、

 \displaystyle \tan\theta=D^2×\frac{u_x(t)}{u_y(t)}

とも言えます。

 

さて、静止している物体を観測者が見てy軸方向の速度を持っているということは、観測者がy軸方向(の反対方向)の速度を持っているということです。

物体のy軸方向の速度が小さくなっていくということは、y軸の反対方向へ力が働いているとも解釈することができます。

つまり、加速運動する観測者がy軸の反対方向へ動いているのに引きずられているのですね。

あれっ、これっって「慣性系の引きずり」? 

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