柵(しがらみ)なき重力論

自由に重力論を展開します。

「速度」は誰が見た速度

特殊相対性理論で物体の速度について話題にするとき、「ある慣性系Aで観測した物体の速度が v であるとき」のような表現がよく出てきます。
この速度とは、誰にとっての速度でしょうか。

以前の記事「向かってくる物体は超光速にも見える」などでも書きましたが、その物体を見ている観測者の立場によって速度は違って見えます。

向かってくる物体は速く見え、離れて行く物体は遅く見えます。
それに伴い、向かってくる物体の時間は縮んで(速く進むように)見え、離れていく物体の時間は伸びて(ゆっくり進むように)見えます。(ドップラー効果です)

では、「ある慣性系で観測した物体の速度」と言うとき、それは誰(どんな観測者)にとっての速度でしょうか。

それは、その物体と同じ位置にある観測者にとっての速度、つまり、物体が向かってくるのでも離れて行くのでもない場合の速度です。

「その物体と同じ位置にいる観測者が観測した物体の速度」と表現したほうが正確ですね。

では、その速度はどうやって測ればよいでしょうか。

物体は動いていますから観測者が同じ位置に入れるのは一瞬だけです。
一瞬で速度が測れるでしょうか。
数学的には微分すればよいですが、物理的にはどう測ります?

大きさ(長さ)のある物体で、その長さがわかっているのであれば、測ることができます。(その方法は「長さの縮み」にヒントがあります)

動いていると長さが縮むので、静止時の長さを知っていなければなりません。
まあ、物理的に大きさのない物体はありませんから、どんな物体でもその速度を測ることができます。

さて、なぜ「その物体と同じ位置にいる観測者が観測した物体の速度」のような面倒な表現をしたほうがよいのでしょうか。

物体を観測者が認識するのには、観測者と物体との距離を光速度で割った時間がかかります。
加速度系にいる観測者では、その時間の間に観測者自身の速度が変わってしまいます。

加速度系から物体を見る場合、一般相対性理論で物体の速度について話題にするときには、「どの観測者」が本質的な意味を持ちます。

重力ポテンシャル(加速度×距離)による時間の伸び縮みは、ドップラー効果(+ローレンツ変換)によるものですからね。
これは等価原理で説明することができます。

(注意:時空間の伸び縮みについて、ローレンツ変換のことを忘れてドップラー効果だけで考えてしまうと、計算結果の数値が半分になって、実測値と合わずに悩むことがあります)

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