深宇宙探査機に乗って、見る(2)
前回の記事で、深宇宙探査機に乗って見た、物体の 軸方向 の速度について書きました。
これは深宇宙探査機の前方から来て後方へ去っていく方向の速度でした。
今回は、 軸方向、つまり、深宇宙探査機に対して横向き方向の速度について見てみましょう。
深宇宙探査機は、一定加速度 で飛びつづけています。
繰り返しになりますが、加速するということは、次々に連続して慣性を乗り継いでいくことです。
ある時刻 の一瞬において、深宇宙探査機から見た物体の速度が であったとします。
そこから微小時間 だけ経た次の瞬間の速度を とします。
この次の瞬間には、深宇宙探査機は だけ速度を増した次の慣性系に乗り継いでいます。
これらの関係について、ローレンツ変換の速度合成の式( 軸方向)を使います。
(式1)
軸方向の速度を求めたときと同様に、 を表す式にするため、いったん物体の加速度の式を求めてから、それを積分します。
まず、式1から を引いて、微小時間 における物体の速度の増加分を求めます。(掛け算の記号 を省略します)
がかかっていない項をまとめて、
項を二つに分けて、
(式2)
式2を で割って、さらに をゼロに近づけて、時刻 における物体の加速度を求めます。
式2の第2項のほうが簡単なので、先にやります。
をゼロに近づけて、
です。
式2の第1項は、ちょっとややこしいです。
を避けるため、分子・分母に をかけて、
をゼロに近づけて、
となります。
ということで、式2を で割って、さらに をゼロに近づけると、式2の第2項だけが残り、
(式3)
となります。
は前回求めました。
式3に代入して、
です。
これを積分すると時刻 における物体の速度 が求まります。
変数分離で積分します。
(式4)
式4の左辺の積分には対数関数の公式
を使います。
( は積分定数)
マイナス符号を の中に入れます。
積分定数の値を と調整して、
積分定数を の中に入れます。
を使います。
(積分定数は左辺にまかせます)
式4の左辺=右辺で、
の中を取り出して、
に関する式に直して、
です。
積分定数の は、時刻 のときの物体の 軸方向の速度で、
、
であり、 ならでした。
積分定数の は、時刻 のときの物体の 軸方向の速度で、
です。
この初期値を使うと、
です。
の値は、最小値が1、最大値が ですので、 軸方向の速度は初期値からゼロに向かってどんどん小さくなっていきます。
また、もともと 軸方向の速度がない、つまり なら、
ですので、そのあと、ずっとゼロです。(つづく)